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水 沢 有 美

水 沢 有 美

水沢有美さんと<青春学園シリーズ>第3回

水沢有美さんと<青春学園シリーズ>第3回
第一部:夏木陽介主演『青春とはなんだ』(2)
わが役を行く~『青春とはなんだ』第21話「わが道を行く」篇~
 

 さて第18話「制服の日誌」に初登場した水沢有美さんですが、19話、20話と登場していません。監督さんが違うせいでしょうか。再び高瀬昌弘監督がメガフォンを取るこの第21話「わが道を行く」にて2度目の登場と相成りました。

 ゲスト・スターは若林映子(わかばやしあきこ)さん。私などは若林映子さんといえば「私は金星人」というセリフが条件反射的に浮かんできます。分かる方には分かりますね。そうです。東宝映画『三大怪獣地球最大の決戦』(1964年12月20日公開、本多猪四郎監督・円谷英二特技監督)での某国の王女役です。予言者として登場して怪獣たちの出現を予言します。夏木陽介さんは刑事役として共演しています。ちなみに夏木、藤山、若林の三人が共演しているのは『大怪獣ドゴラ』(1964年8月11日公開)です。

第21話の放映日は1966(昭和41)年3月13日でした。脚本は井手俊郎さんです。映画館の支配人を経てプロデュサーなり、難航していた『青い山脈』の脚本をまとめたことで脚本家になったという変り種シナリオライターですが、青春物の申し子のような方でもあります。
物語は、アメリカ留学中に喧嘩友だちだった柴田弓子(若林映子)が野々村健介(夏木陽介)をヘッドハンティングしにやってくることから始まります。日本にもアメリカのディズニーランドのようなレジャーランドを作るプロジェクトの手伝いをしてほしいということなのです。

 水沢有美さんは、第18話と同じく巻頭のプロローグ・シーンから登場します。冒頭の【青春とはなんだ】のタイトルに引き続き画面に現われるのは、ハイキング帰りらしい山下順子(豊浦美子)、松井勝子(岡田可愛)そして小沢佑子(水沢有美)の三人です。歩き疲れたらしく車を止めてヒッチハイクに切り替えようというということになります。第18話では水沢有美さんは、セリフはあってもワンフレーズのものばかりでしたが、この第21話では初っ端から複文の長いセリフがあるのです。記念碑的な場面なので、少し長くなりますが、採録してみます。

松林の道を歩いてくる順子、勝子、佑子の三人。ハイキング帰りらしい。
勝子 「まいったわね」
佑子 「歩こうといったのは、あなたじゃない」
足を引きずりながら松の木に背中を着けて休む順子
順子 「(足を触り)ああ、足がいたい」
佑子 「私も(足を手で叩く)」
順子 「ちょっと休まない」
佑子 「うん」
順子 「こんなに靴づれしちゃったわ」
勝子、周囲を見渡して土手の車道を走ってくる車を見つける。
勝子 「あ、自動車が来るわ」
順子 「よし、任しといて」
三人、元気よく車道に向かって走り、順子、親指を立てて車を止めようとする。
順子 「ヘイ。ストップ!」
だが、通り過ぎていく車。
勝子 「ああ!」
順子 「ちぇっ!」
勝子 「よし、今度は私に任せておいて…ああ、来た来た! ちょっと乗せて」
 やってきたダンプの運転手の怖い顔を見て躊躇して振っていた手を下げる勝子
順子 「なによ」
勝子 「だって…」
順子 「(佑子に)今度はあんたよ」
佑子 「ダメダメ」
勝子 「やんなさいよ」
佑子 「あんたたちのそういう無責任な態度が犯罪を挑発するのよ」
順子 「犯罪ですって」
佑子 「近頃のドライバーは信用できないんだから…これっと思う女性に声をかける…」
勝子 「なんて」
佑子 「うちまで送りましょう。(順子を指差し)うちはどこ?」
順子 「森山よ」
佑子 「じゃあ、ちょうど同じ方向だから送りましょう。そして、走る密室。どんなに叫んでももうダメ!」
勝子 「見損ないで! これでもね…」
言い争っている三人の前に一台の乗用車が止まる(ヤナセ提供)
三人 「あツ!」
 運転席から声をかける女性、柴田弓子。
弓子「ちょっとおたずねしますけど、森山って町はこの道を行って間違いないんでしょうか?」
順子 「ええ、そうです」
弓子 「どうもありがとう…あっ、あなたたちもそっちの方へ行くんでしょう」
勝子 「あのう…まあ、そうですけど」
弓子 「そう。よかったらお乗んなさいよ」
 顔を見合わせる三人。さっきの会話が気になっている。
弓子 「どうしたの。ね、ハイ(手招きする)」
 勝子、嬉しそうに助手席の方へ駆け出す。
順子 「勝子! 大丈夫?」
勝子 「なにいっているの。女同士じゃない」
 (この後、車中での四人の会話があるが、これは省略)

 ちなみに『青春とはなんだ』から『これが青春だ』にかけてのオープニング・シーンは意外と長く1シーンだけではない場合が多々あります。この第21話もこのあと森山高校グランドでの野々村先生とラグビー部員のやりとりがあり、サブタイトル&クレジットに移るのです。というわけで、水沢有美さん2度目のクレジットはどなたと並んでいるのか見てみましょう。

1枚目 夏木陽介
2枚目 藤山陽子
3枚目 豊浦美子、岡田可愛、寺田農
4枚目 矢野間啓治、木村豊幸、樋浦勉
5枚目 柴田昌宏、水沢有美、松田八十栄、北島マヤ
6枚目 遠山智英子、有田めぐみ、篠原美恵、田中博
7枚目 名古屋章、富田仲次郎、田島義文
8枚目 賀原夏子、若林映子
9枚目 平田昭彦
10枚目 山茶花究

 セリフや登場場面が多いだけあってサブ女生徒の中でトップの位置に来ています。また便宜的にこの第21話を全34場面に区分したのですが、そのうちの10場面と約3分の1に水沢有美さん出演されています。以下、簡単に紹介します。鼻をさわるしぐさは今回もありました。

第2場面(#4)森山高校グランド。三人を乗せた弓子の車が入ってくる。車を降りて野々村先生を探すが帰宅していて会えない。永井先生(藤山陽子)と弓子の初対面。

第3場面(#6) 野々村先生の下宿。
弓子を案内して三人も上がって待っている。帰ってきた健介は弓子を見て驚くが、そんな二人が「ユミ」「ケン坊」とお互いを愛称で呼び合うのに驚く三人娘と下宿のおばさん(賀原夏子)。この怪訝な顔をして三人がお互いの顔を見合わせるときに水沢有美さんが鼻をさわっていました。

第4場面(#7)食堂やよい(順子の家)の店内。
久保(木村豊幸)と寺田(矢野間啓治)を加えて柴田弓子のことを話し合っている。ここでの水沢有美さんのセリフは相づち程度の他に二つほどでした。「ねえ、あの人いったい何しに来たのかしら」、「まだ恋人かどうかわからないわ」

第5場面(#20)教室。
女生徒8人が揃って弓子のヘッドハンティングを阻止する相談をしている。水沢有美さんは、ほぼ中央の位置にいました。

第6場面 (#28)森山高校校舎。
2階から弓子の車が来るのを見張っている佑子「あ、来た、来たわよ」と車を見つけみんなに合図し、一斉に駆け出していく8人の女生徒たち。

第7場面(#29)道。
やってきた弓子の車を止める8人の女生徒たちの一人。

第8場面(#33)河原。
弓子に懇々と諭されている8人の女生徒たちの一人として。傍の川の近くではラグビー部が練習をしている。野々村先生がやってきて、そのうちに永井先生、手塚の父(田島義文)、久保らもやってくる。弓子に諭されているシーンでは後姿をずっと見せていたのが水沢有美さんでした。

第9場面(#34)土手の道。
野々村先生と手塚(柴田昌宏)が一本杉まで往復10回のマラソンを二人でするのをみんなで眺めているシーン。ちらほらと顔が見え隠れする程度。

第10場面(#35)森山高校校舎の前。
弓子との別れのシーン。野々村先生、永井先生、ラグビー部員、女生徒たちが弓子を見送る。ただし、遠景で映っているので水沢有美さんがどの位置にいるのかは、はっきりとはわかりません。
 
 といったところで冒頭のシーンに代表されるように順子と勝子の暴走振りを抑えるといった役どころでした。ちなみに余計なことですが、この三人娘をやっていた女優さんたちのその当時の実年齢をいいますと、順子役の豊浦美子さんは23歳、勝子役の岡田可愛さんが17歳、そして水沢有美さんは14歳といった按配で、お姉様たちを抑えつける健気な妹という感じなのでした。
 
 今回は、登場シーンが多いだけにとても長くなってしまいました。お付き合いいただきありがとうございました。次回の第4回は『青春とはなんだ』第25話「どろんこ作戦」篇です。水沢有美さんはあまり登場しないのですが、タイトルとして<消えた水沢有美さん>になります。何故、こういうタイトルをつけるのか? それは次回のお楽しみ。乞うご期待!



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